みなさんこんにちは、矯正担当医の槇本です。
みなさんは、ご自身の横顔をじっくりと見たことはありますか?また、横顔が、こうだったらいいな、と思ったことはありますか?
実は、患者様の矯正したい動機の1つに、「口元の突出」というものがよく挙げられます。当院の初診相談でも、患者様の訴えでは「口元の突出」は、トップ3に入ります。
ここで、矯正治療は歯並びを治す治療であって、顔を変えるなんてできるの?と、きっと疑問に思いませんか?
実は、矯正治療は、歯並びだけでなく、横顔の印象までも、変得ることができるのです。なぜなら、不正咬合の中で最も多い不正咬合の1つ、「出っ歯」はほとんどの場合、横顔にも影響を及ぼすからです。
・出っ歯(上顎前突)とは
上の前歯が強く前に傾斜していたり、上の歯ならび全体が前に出て噛んでいる状態です。また下のアゴが小さかったり、後ろにあることで見かけ上、出っ歯にみえることもあります。この状態では、口を楽に閉じることができませんし、顔のケガで前歯を折ったり、くちびるを切ったりしやすいです。またこの噛み合わせにより、下の前歯が上の前歯の裏側の歯ぐきを傷つけていることもあります。このように、出っ歯は不正咬合の1つとして、大いに治療すべき咬合です。
上の図の出っ歯の治療の前後の側貌の変化を見てください。口元の雰囲気は大きく違うと思います。このように、出っ歯の場合は、治療後、横顔もとてもキレイに変化することができるのです。
では、いちばんキレイな横顔はどんな横顔なのでしょう?
治療する際、どこををゴールとすればいいのか、実はとても迷うものです。というのも、「キレイ」は、個人差が大きく、一人一人基準が異なるからです。
私が大学時代で教わった、設定する治療のゴールは、患者様の上顎骨、下顎骨の位置や、前歯の傾斜角度を分析し、平均値内に納めていくように治療する、というものでした。
しかし、治療後、咬合がどんなにキレイでも、横顔の印象がイメージと違うと、せっかく矯正したのに・・・、と、患者様は十分に満足することができないでしょう。そこで、「日本人に最も好まれる横顔」を調べた論文の1つに、とても興味深いことが書いているので、紹介したいと思います。
下の図は、#7を平均として上下唇を水平に1mmずつ、前後に変化させた13側貌のシルエットを、男性、女性に分けたものです。
①男性
②女性
矯正歯科医(青丸)、歯学部生(赤丸)、矯正患者(緑丸)の最も好む側貌を、男女別に示しています。
ここで興味深いのは、
・矯正歯科医、歯学部生は平均的な側貌よりやや口唇が後退している側貌を好む傾向にあり、特に歯学部性は女性でその傾向が強い
・矯正患者においても同様に、より口元が後退している側貌を好む傾向にあり、特に女性でその傾向が強い
という結果になっています。
ということは、患者様は矯正歯科医よりもさらに口唇が後退している側貌を好むことから、治療計画の立案では、患者様の側貌に対する意見をよく聞いた上で、治療計画と方針を立てる必要があることを示しているのです。
私もこの図を見て、矯正歯科医が最も好む横顔が好ましい、と思っていました。みなさまは、どの側貌がキレイだと思いますか?
また、ぜひ矯正治療を検討した際には、担当の歯科医に側貌のイメージを伝えてみてくださいね。