アンキローシス(骨性癒着)を起こしている可能性があります。
アンキローシスとは、歯の根と歯の周りの骨(歯槽骨)がくっついてしまう状態のことです。
健康な歯は、歯の根と歯槽骨の間には歯根膜と呼ばれる血管の膜があります。アンキローシスを生じている歯は、この歯根膜がありません。
このような歯は、矯正治療により動かすことはできません。
脱臼処置を行って動かすこともあります。骨性癒着の疑われる場合は治療計画を変更しなければならない事があります。
①アンキローシスの原因
外傷や炎症によって生じます。
原因不明なことも多く、埋伏歯でアンキローシスを起こしていることあります。
❶外傷
上の前歯をぶつけてしまった事が原因でアンキローシスを生じます。当該歯ではなくても、子供の歯(乳歯)をぶつけたことにより、大人の歯(永久歯)がアンキローシスを生じてしまいます。ぶつけて、歯の位置に変化はなくとも、歯根の歯根膜に損傷を受けている事もあります。歯根膜を一部、損傷してしまっている場合でも、アンキローシスが生じてしまう事があります。
❷先天的な萌出不全
原因不明で、歯が歯茎の一定の高さから生えてこないという事があります。 途中までは生えてくるのですが、萌出が止まり、横の歯と高さが違ってしまいます。このような場合、最初は診断ができません。
❸炎症
大人の歯が骨の中で萌出している準備をしている時に、炎症がおきる事で、骨の中で歯根が癒着してしまう事があります。この様な歯を埋伏歯と言います。上の犬歯に多いです。 また、根の先まで感染した虫歯の場合、根の先に歯根のう胞を作ってしまう事があり、治療しても、歯根部の歯根膜が無くなり、アンキローシスを生じてしまう事があります。
②アンキローシスの診断
アンキローシスが疑われる場合、レントゲンで、歯根膜の線がしっかり見えるかを確認します。歯根膜の線が見えない場合は、アンキローシスの可能性があります。歯が動揺するかを確認するのも有効です。正常な場合は、生理的動揺といって指で歯を動かすと、歯が揺れているのを感じますが、アンキローシスを起こした歯は、全く動揺がありません。 また、歯を金属で叩くと、金属音のような音を感じます。
③アンキローシスを生じた歯の移動
アンキローシスが生じていると診断した場合、歯を抜くような力をかけて脱臼をさせ、再度、矯正力をかけて移動を試みます。動いても、神経が死んでしまうこともあります。また、歯根が再度、歯槽骨と癒着してしまい動かない場合もあります。そのような場合は動かす事を断念して、被せ物で修正したり、アンキローシスの歯を抜歯して、ブリッジやインプラントにする場合もあります。