こんにちは、南千住小児歯科矯正歯科の槇本です。
さて今回は、叢生の治療についてご紹介いたします。矯正相談の主訴である第一位は、叢生です。前歯がガタガタしていることは、やはり患者様も気付きやすいのではないでしょうか。
初診時19歳2か月の女性、主訴「前歯のガタガタ」でした。
口腔内写真:
上顎は八重歯、下顎も右側の犬歯は著しい叢生になっています。下顎の叢生が非対称のため、大臼歯に左右差が生じています。側貌は、口元の突出はありません。また、側面頭部セファロ分析で、骨格的な不調和はなく、歯軸も問題ありませんでした。
以上の点から、治療計画は上顎両側第一小臼歯、下顎は右側第一小臼歯を抜歯し、叢生の改善と正常な被蓋の獲得を行うこととしました。
今回、下顎は大臼歯が非対称であったため、抜歯部位も非対称としました。そのため、治療時には歯列が歪まないようにし、最終的に左右対称となるようにします。
治療経過です。治療開始1カ月後に上顎にリンガルアーチを装着し、犬歯を遠心移動を始めました。
治療開始11ヶ月には、抜歯空隙は概ね閉じてきました。また、臼歯の適切な咬合を獲得するため、患者様に顎間ゴムの使用を開始しました。
治療開始22ヶ月には、抜歯窩の空隙は閉鎖完了し、正常な被蓋を獲得できました。下顎前歯にfixを装着し、上下に可撤式のプレートタイプの保定装置を使用開始しました。
現在は保定開始後18ヶ月ですが、fixと可撤式のプレートタイプの保定装置の使用により咬合関係の維持は良好です。
保定装置の種類は様々あります。
fixとは、細い針金を歯の裏側に接着する装置になります。歯の裏側に針金を固定するので正面から見えず、取外しの面倒もありません。ただし、歯の裏側に固定されているので歯みがきが難しく、針金の周囲に歯垢が溜まりやすいことが欠点です。日頃の丁寧な歯磨きはもちろんのこと、歯医者さんで定期的なクリーニングが必要です。
可撤式の保定装置は取り外しができることが特徴です。ワイヤーで歯を抑えながら樹脂の素材で歯茎を覆うタイプ(ベッグタイプ)や、後戻りがしやすい前歯のみを抑えるタイプ(ホーレータイプ)、歯列全体を透明なマウスピースで覆うタイプがあります。
どのタイプの可撤式リテーナーも着脱が面倒なことが難点ですが、食事や歯みがきの時は外せます。また、きれいに清掃できるので清潔な状態を保つことができます。
「保定装置をいつまで使えばいいのか?」とよく患者様に聞かれますが、歯や歯茎、顎の骨などは加齢とともに変化するものです。だからこそ、可能な限り長期的な使用をおすすめします。「ちょっときついな」「ゆるくなってきたな」など、ちょっとした口腔内の変化にも気づきやすく、万が一後戻りが起きた場合でも小さな修正で済みます。
保定期間中も、定期的に通うことで咬合のチェックはもちろん、虫歯や口腔内のクリーニングもできますのでぜひおすすめします。
このブログが治療前後のイメージに役に立てれば幸いです。このほかにもいろいろな症例がありますので、引き続き今後も紹介していきたいと思います。